※ 某Gが苦手な方は読まないでください ↓
一匹見かけると、30匹はいるといわれている例のヤツです。
馴染みの事務所に顔を出し、ムスメ特製のアイスコーヒーを、ご馳走になる。
いつもふざけ合う少年は休みのため、話し相手はここにいるムスメ一人だ。
久々に、麻衣を独り占めできる喜びに顔を綻ばせていると、ソファに座ったムスメが、ハッと何かを思い出したかのように、こちらに顔を向けた。
何か、思いついたことがあるらしい。
顔を顰めた後、徐に口を開いた。
「ゴキブリ見ると、ナルのことを思い出しちゃうんだよね」
何故、ゴキブリでナル坊を思い浮かべるんだ。ムスメよ。
それは、アレか。
ナル坊が黒いからなのか。だったら、リンでもいいばずだ。
そして、何故、このタイミング。
麻衣には、Gが見えるのか。
いま、ここにいるのか、ヤツが。
周囲を窺いつつ、どうして、G=ナルちゃんなのか、麻衣に聞いてみた。
「学校で出たんだ。ゴキブリが。その時、クラス中で、キャーキャー言って、始末するまで大騒ぎしていたのに、殺しちゃったら、みんな、あの興奮はどうしたのっていうくらい落ち着いたの。それ見たら、ナルと変わらないなぁと思って」
ごめん。麻衣。
それを聞いても、オトウサンには、サッパリ分からん。
いったい、ソレとナル坊と、何処で繋がるんだ。
かける言葉もなく、麻衣が話すのを待つ。
「えーと。だからね。ナルって、生きてる人には、基本無関心でしょう。でも、ゴーストには興味深々。ゴキブリは生きているときは、周囲から大騒ぎされるけれど、亡くなってからは関心が無くなるじゃない。そこが、ナルとは正反対だなと思ってさ」
ムスメの話を纏めると、Gとナルとの関心度が生死によって正反対だと言いたいんだな。
混乱した脳内を整理して回答を導き出す。
うん、よし、すっきりした。
「ナル坊の気を惹きたければ、ゴーストになるのが一番だな」
「それは、そうだけど。絶対にヤダ」
「解剖もアリだからな。俺らの場合は」
うんうん、と頷くムスメを見て、ナル坊の恋は前途多難だなと思う俺だった。